最近、皮膚炎の症状の一つとしてよく名前を聞く「アトピー性皮膚炎」ですが、これが人間だけでなく、犬にとっても無視出来ない皮膚炎だというのはご存知ですか?
もしかしたら飼い主さんの中には現在、アトピーの治療に通われている方や、すでにもう何年もアトピーと付き合っている、という方もいらっしゃるかもしれません。
アトピーは未だ謎の多い皮膚炎
アトピーという名前はギリシャ語で、奇妙な・特定されていないという意味のあるアトポスという言葉から付けられています。
その由来の通り、原因が解明されていない謎の多い皮膚炎で、皮膚に関する現代病の代表格となっています。
日本皮膚科学会のガイドラインではアトピー性皮膚炎は、「表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる、慢性に経過する炎症と掻痒をその病態とする湿疹・皮膚炎群の一疾患である。患者の多くはアトピー素因を持つ」とされています。
順を追って詳しく解説していきますと、「皮膚の乾燥とバリアー機能異常」というのは、体内の水分が蒸発しないように体の内部に留めておく機能および外界の異物が侵入しないよう防御する機能が侵されてしまうということで、皮膚の保湿に関わる成分であるセラミドの減少も原因の一つであると言われています。
これらの機能が低下してしまうと皮膚常在菌のバランスが崩れてしまい、結果、表皮の黄色ブドウ球菌の異常増殖を招いてしまいます。
次に「多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応」についてですが、非特異的刺激反応とは汗や乾燥、ストレスなどのこと、特異的アレルギー反応とはアレルギー反応を引き起こすアレルゲン(ハウスダストや花粉、ダニ、真菌など)に感作された状態のこと、と思っていただくとわかりやすいと思います。
そして「アトピー素因」のことですが、これは遺伝的にアレルギーを起こしやすい体質を持っているということを指しています。
犬アトピー性皮膚炎の原因と治療法
犬におけるアトピー性皮膚炎の原因としてあげられるものも、人間の場合と一緒です。
なお、遺伝的にアトピー性皮膚炎の多い犬種には、柴犬・シーズー・ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー・ウェストハイランドホワイトテリア・ブルドッグ・パグなどが挙げられます。
アトピー性皮膚炎の治療には、いくつかのステップがあります。
と言うのも、別の疾患がアトピー性皮膚炎を悪化させている場合も考えられますますので、まずはそれらへの治療を行うことが必要になってくるからです。
具体的に例を挙げれば、膿皮症・マラセチア皮膚炎・疥癬・毛包虫・ノミによる皮膚炎などです。
膿皮症は毛穴の中に細菌が入り込み、炎症を起こす皮膚炎です。
痒みがあり、赤い湿疹や環状の赤みなどが見られます。治療には抗生物質の投与が行われます。
マラセチア皮膚炎は酵母の一つであるマラセチアによって起こる皮膚炎です。治療には抗真菌薬を使います。
実はこのマラセチア皮膚炎も膿皮症も、原因となるのは正常な犬にも存在する微生物や菌なのですが、皮膚の免疫力が低下すると悪さを開始します。
次に疥癬・毛包虫(アカラスとも言います)・ノミといった外部寄生虫による皮膚炎である場合です。
この場合はそれらを駆除する薬を使って様子を見ます。
症状が改善されるようであれば駆除の治療を続けるという診断的治療という方法を用います。
上記に挙げた治療方法の他に、食餌療法というものがあります。
除去食と呼ばれる、アレルギーを起こす原因となる物質を取り除いたもので作られたドッグフードを与えて反応を見る治療方法です。
普段は口にしないようなタンパク質で作られているため(ラムやダック、カペリンなどが使われています)アレルギーを起こしにくいのです。
これらの治療方法を用いて他の原因をなくしたら、いよいよアトピーの治療に入ります。
アトピー治療の具体的な方法をご紹介
アトピーの治療には投薬の他にスキンケアという方法があり、投薬では、炎症を抑えるためにステロイド剤や抗ヒスタミン剤が用いられます。
ステロイド剤は一般的に強い薬で怖いというイメージがあると思いますが、間違った使い方をしなければとても有効な薬となります。
止め時や量等をご自分で判断したりせず、獣医の指示に従って飲ませてあげて下さい。
他に使用される薬には、免疫抑制剤やインターフェロン、サプリメントなどがあります。
スキンケアの中でも特に注目したいのは保湿です。
アトピーのガイドラインについてお話しさせていただいた時にもお話ししたかと思いますが、アトピー性皮膚炎では皮膚の保湿に関わるセラミドという成分が減少してしまっている、ということも考えられるため、それを補ってあげることが大切です。
シャンプーで洗浄することによってアレルゲンを除去すること、保湿をすることによって皮膚へのダメージを軽減させてバリアー機能を回復させること。
この2点がアトピー性皮膚炎におけるスキンケアでは重要になってきます。
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